ラジオミールベースのデザイン

パネライ/ラジオミールベースPG(PAM00231)のデザインの魅力について思うところをまとめてみる。
クッションケースの四隅は薄くなっていて、横から見ると菱形というか「目」を細長く伸ばした形をしている。角の出っ張り部は細く尖り、ワイヤーループ式ストラップを留めるのに必要な空間を形成している。この辺りの贅肉を削ぎ落としつつも流麗な造形がこのケースの最大の特徴だろう。
竜頭はクラシカルな形状。滑り止めの刻みは機能性と共に光を集めて華やかなアクセントとなっている。
風防はごく軽い曲面になっていて隅々まで力が漲った印象を見る者に与える。
マットブラックの文字盤から一段下がったインデックスは意外に深い位置にある。そのためキラリと光るゴールドの針はより一層浮かび上がって見える。上から見るとシンプルなグラフィックなのに意外な奥行きがあるところに面白みがある。
もちろん数字のゆるやかでリラックスした書体はパネライ時計で最も明快なアイデンティティといっていいだろう。この特徴的なテイストを十二分に活かすためには秒のインデックスは必要ない。
ケース外径は45mmであり、ワイヤーループと合わせると自分の場合はほぼ手首の幅と同じとなってしまう。確かに大きい時計ではある。ただこの大きさがファニーな魅力を醸し出している。そしてシースルーバックから見える懐中時計用といわれるムーブメントは上品に磨き上げられ、そのサイズもあって大きな見所なっている。ちなみに細い手首にはパネライは似合わないという意見に対して、自分は正反対の意見を持っている。大きさを際立たせるためにはむしろ細い手首の方が良い。太い手首では普通の時計になってしまうではないか。アンバランスな大きさにこそ意味がある。
一方で手巻きであることは薄さを生み、手首にはまるようにしっくりと収まる。シャツやセーターの袖口に意外にもするりと隠れてしまう。
最後に多品種少量生産について言及したい。それ程多くないデザインの要素を様々に組み合わせることで、多くの人が自分好みの時計を見出すことができるという意味で、パネライは時計好きの心を巧く捕らえているのだと思う。