鉄塔 武蔵野線 単行本初版

新潮社の単行本「鉄塔 武蔵野線」初版を購入した。ソフトバンク文庫版とは終結部が異なると聞いて興味を持った。
映画と同じなのかと勝手に思っていたのだが、ソフトバンク文庫版の内容を大幅に膨らませた内容だった。正しくは文庫版で内容を大幅に削ったというべきだろう。
鉄塔の頭頂部にはカメラが付いていて360°監視することができるとか。変電所の中に巨大なジオラマがあったり、鉄塔群を電気的にクリーニングするための大掛かりで幻想的な設備とか、ファンタジーそのものの世界が延々と続く。文庫版で東電の職員が美晴らの行動を監視カメラで見ていたというくだりがあるが、美晴が監視カメラに気付かないことがあるだろうかと疑問だった。それ以前に鉄塔に監視カメラが付いているということ自体が想像し難い。ソフトバンク文庫版ではこのカメラのような現実的でない話が少しだけ唐突に出てきて強い違和感を覚えたのだが、単行本くらい思い切り突っ走ってくれるとやっと安心納得できる。
ただ、この単行本もファンタジーノベル大賞を受けたものに加筆とある。今度は評価された原本を読んでみたくなってしまった。