日輪の遺産

原作は未読で映画のみの感想になる。
後味が悪い。何も聞いてないという少女の嘘に騙され、結果、青酸カリを盗られて集団自決されてしまう大人。自分の信念で、仲間の少女達をも巻き込んで命を捧げてしまう少女。戦時下の話であっても、善良な人間が下手をして不味い結果になるというのは見ていて面白くない。純粋な心に触れて感動を、ということなのかも知れないが、それなら本編より、自決先導役の少女を演じた土屋太鳳を中心に撮られたメイキングの方が出来が良い。
涙のシーンで、カメラアングル上?の理由から本人の意図とは別に使われてしまった目薬が悔しくて本気泣きする。それを知った監督が手厚くフォローするのも良い。
玉音放送のシーンの撮影の前に皆で気持ちを作るために、自分が演じる少女が親に宛てて書いたという想定で、土屋自身が書いた手紙を、級友たちに読み聞かせる。それを聞いた少女の中にはその場で泣き出すものもいるが、涙は本番に取っておいて、と制する。
集団自決後の無言のシーンの撮影直前に、モノローグで使われる台詞をアドリブで言って皆の気持ちをひとつにする。
裏方であるスタッフに対して、恐らく意識的に子供らしく無邪気に振る舞って現場を和ませる一方、自らの演技のみならず共演者に対しても積極的に働きかけて作品を少しでも良くしようとしている。幼い顔に似合わぬ、プロ意識に驚く。
ありがちな役者の素顔を捉えたというものではなく、映画が人の手でどのように作られているのかよくわかる、本物のメイキングになっているように思う。