喪服のランデヴー

最近、女優の麻生久美子をテレビや映画で目にすることが多くなった。この女優を初めて知ったのは、2000年に放送されたNHKのドラマ「喪服のランデヴー」だった。
恋人(麻生久美子)を殺された若者(藤木直人)が、犯人たちの愛する人に近づき、恋人の命日に毎年ひとりずつ殺してゆく。最後のターゲットは若者を愛してしまう。そして真実を知ってもなお若者を愛し続け救おうとする。
そのターゲットは麻生が二役を演じていた。二役ということで、もしかしたら若者を救えるかも知れないと思わせる演出には唸ってしまった。
原作はコーネル・ウールリッチ、脚本を野沢尚、音楽を東儀秀樹が担当していた。時間も場所も超越した不思議な世界感を持つ良いドラマだったと思う。
そしてこのドラマで時計が効果的に使われていた。最終話、復讐を遂げるためだけに生きていた藤木が息絶え、その左腕で恋人を失ってからずっと止まっていた時計がにわかに動き出す。恋人との幸福な時間が再び始まることを暗示して物語は静かに終わる。
ドラマの中ではクオーツ時計が使われたが、機械式ならより現実味が増したのにと残念に思ったことを覚えている。
ちなみに原作には時計を壊してしまうという記述はあったが、再び動き出すというのはなかった。