Wilson Benesch ARC の音質


ユニットの締め付けトルクは、ウーファー41.5、トゥイーター外側41.5、内側は手持ちのドライバーの最大値60とした。ウーファーは Bishop のミッドバスと同じ値。またトゥイーターは Bishop ではフェルトで覆われてしまって触れないので上記の値に根拠はない。
Bishop を部屋の隅に押しやり壁向きにして、代わりに ARC を定位置にした。耳の高さは本当はもっと低くしないと合わないのだが椅子はそのまま。DG-48 の調整も定在波の山を一カ所削り、高域をなだらかに落とすのみという現在の設定をそのまま使用した。
PAD や Monitor Audio のエンハンスソフトで馴らしつつ何日か聴き込んでみた。
音量は2日目までは1〜2dB ARC の方が大きかったが、その後馴染んだのかほぼ Bishop と同じ音量感となった。高域が強めに出て、低周波領域は欠落する。中高域は予想以上に音調は同じ。トゥイーターがエンクロージャーの端にあるためか高域はよりすっきりと音離れが良い。
大きく違うのはやはり低域で、量は十分だが質はぼんやりして不透明な印象。音色表現の幅が狭く、一定の方向に限定される。低域の音場表現があいまいになる。近付くと底面のポートから低音だけでなく結構な上の帯域の音も盛大に出ているのがわかる。全体として却って Bishop より大きなスピーカーが鳴っているように聴こえるのが興味深い。
密閉の Bishop と違い、大らかで伸びやかな低音はエレキベースのボワーンとした音色と相性が良い。ユニットの動きが制限されないためか、パワーハンドリングも Bishop と大差ない。
小型スピーカーの長所は点音源に近いため、精確な音を出せることであり、短所は低音が出ないことだろう。精確な音を犠牲にすれば、質はともかく低音もある程度出すことができる。そのバランスはデザイナー次第だ。
ARC はメインスピーカーとして好ましいバランスで音楽を楽しめる方向を目指したのだろう。「これで十分に楽しめるでしょう、さらなる低域の表現力を求めるなら上級機が控えています」とデザイナーは考えているようだ。小型スピーカーならではの音の特質を極限まで引き出そうという考えは全くないに違いない。