吉村家

家系ラーメン総本山。平日の12:40に15人待ち。店が大きいので15分くらいで席に着くことができた。チャーシューメンを食べた。
スープは透明感の乏しい濃い茶色。甘く大変にまろやか。ただし塩辛く油分も多いのでやさしい味とは感じられない。甘さまろやかさは世のラーメンの中でも最大級だろう。キレがないので最後まで美味しく食べられるか心配だったが、香り味ともに強い海苔や、少々あくの強いホウレン草、そして何より後述のチャーシューで単調さから逃れて最後まで楽しむことができた。良く知る家系の具がその本来の役割を十二分に発揮しているのが痛快だ。あとは量の少なさも効いていると思う。カウンターの胡椒、生姜、酢、ガーリックチップ、おろし行者ニンニクなどを好みで入れられるので、食べながら味を変えれば大盛りでも問題ないことと思うし、それこそが本道だろう。
麺は断面が長楕円のストレートでこちらは特徴はなく、他の邪魔にならないのは良いともいえる。
チャーシューは出色。焼き鳥のささみ焼きのようなキシュキシュとした清新な食感。炭焼きのような香ばしさ、焦がしたような苦みのアクセントまで効いている。メンマの入らない家系ラーメンだが、このチャーシューによって丼の中の世界に予想外の見事なバランスをもたらしていることに感動した。
吉村家のことはかなり以前から知っていたが、特に興味が沸かず行こうと思わなかった。今回も期待せず話題作りのつもりで行ってみて気持ち良く裏切られた。これは昔流行った店のラーメンではなく、明らかに今を生きるラーメンだ。使っている醤油を添加物のないものに変えたり、海苔の入手に苦労したことなどが貼り紙で大書してある。あざとさより過剰なまでの貪欲さを感じる。あのチャーシューも創意工夫あるいはどこからか発掘してきたのだろうか、いずれにしても目覚ましい効果に頭が下がる。十分な富と名声を手に入れ、悪名までも頂戴した有名店主は、しかし相変わらずラーメンそのものに対する情熱は持ち続けているというシンプルな事実を知り嬉しくなってしまった。