埼玉屋

東十条の泣く子も黙るもつ焼きの有名店。
コの字型のカウンターと脇のテーブルの全てが主人の管理下に置かれ、常連以外は事実上コースで食べることになる。主人が焼く前にトレーに入った串を見せながら一人一人「これハツ。食べる?」などと聞いて行くので、一応選択権はあるようだ。
撮影禁止、禁煙。自分が行った時も、あろうことか主人の目の前でタバコをくわえた剛の者がいて、注意というより説教されていた。いわく、食事中のタバコは折角の串の味がわからなくなるのでやめろとのこと。くどくどとしばらくやり込めていたが、他のお客さまに迷惑とは決して言わないのが興味深い。撮影禁止も冷める前の旨い内に喰えということだろうか。
味なのだが、9本の最初に脂たっぷりのタレの串が出て出鼻を挫かれる。寿司屋で大トロを最初に食べるような趣向だろうか。さっぱりしたタンの塩が中ほどに出たりと、自分では頼まない順番だ。ガーリックバターやサルサソースを掛けた串があったり、豚耳の和え物が胡麻油ではなくオリーブオイルだったりと工夫されている。ただ、個人的には珍しいだけでオーソドックスなものより旨いとは思えなかった。串のサイズは小振りで、頬張る感じにはならない。
肉質は文句無し。焼きは炎をそのままにして煤の味が着いていたりもする。
総じて、撮影禁止や禁煙だけでも大いに希少価値があり、主人のパフォーマンスも愉しい。串は好みとは異なり、価格も高いのが残念だ。