紀元前1世紀頃のビクス文化の壺を入手した。ビクス文化は、南米アンデス文明のひとつで、現在のペルー北部に栄えた文化という。
大きさは約20cm。神事の道具で、トウモロコシの酒を入れたそうだ。モチーフはクイと呼ばれる食用ネズミ(モルモット)で、この種類は体長40cmにもなる。日本での鶏のような家畜で、現在でもペルーでは一般的な食材という。祭りで欠かせない肉ということで酒器のモチーフとなったのだろう。食文化の方は2千年以上受け継がれているのは興味深い。
仰向けのクイは腹がドーナツ状に空洞になっている。不思議な造形だ。酒器として内容量を適度に抑えるためと、強度アップにはなっているだろうが、本当の理由はわからない。酒器の取っ手にはクイの前足が添えられ、後ろ足は省略されている。取っ手にぶら下がっているように見えて、親しみやすい感じがする。尻尾の先の穴が、注ぎ口となる。頭は目鼻耳まで活き活きと描写され、前足には指も見て取れる。それらの装飾は注ぎ口の逆側に集中して、注ぎ口の周りは機能的になっている。その対比が不思議さを強調して魅力になっていると感じる。