ラーメン二郎亀戸店

80年代中頃、三田で一度だけ二郎のラーメンを食べたことがある。それ以来、注文方法を始めとする特別さが面倒で敬遠してきた二郎に久しぶりに行った。
近所にある亀戸二郎で小ぶたを食べた。
ふっくら柔らかい太麺。角が立っていないので妙にやさしい印象。スープは大量の油が表面を覆い背脂も浮くもののエキス分は乏しくさっぱりしている。自分はむしろ味気ないと思った。背脂の甘さと醤油のキレの対比のみで食べさせようという勢いを感じる。そして潔い。スープは驚くほど塩辛く、不本意ながら全ては飲み切れなかった。
煮豚はぱさぱさして旨みも少なく今ひとつ印象は薄い。野菜は冷えているので、他の具材とのバランス云々ではなく、丼の中にサイドディッシュが入っている感じだろうか。

「ラーメンではなく二郎という食べ物」という表現があるが、わかるような気がする。幕の内弁当にも似た小宇宙的な美しさや、味や食感の対比の妙といったラーメンが持ちうる美点には端から目が向けられていない。どちらかといえば、つゆに浸してひたすら麺を食らう蕎麦の感覚に近いものがある。ただし麺を手繰る軽快な楽しさというものはなく、黙してわしわしと麺を胃に収めるストイックさがそこに漂っている。己の肉体の限界に挑戦するスポーツの爽快さがあるといったら言い過ぎだろうか。

いずれにしても亀戸店だけで二郎を語るのは無理があるだろう。何店か訪ねて二郎というものをもっと知りたいと思う。