Aquanaut

Aquanaut

パテックフィリップのアクアノートレディースを購入した。ステンレスで気軽に使える黒文字盤の時計を以前から妻が欲しがっていたところに、ベゼルにダイヤのない旧タイプの未使用品が出てきたため入手した。
デザインは非常に個性的。同じくゴムとステンレスに黒文字盤のウブロクラシックと比べると面白い。
トロピカルバンドと呼ばれるウレタンゴム製ストラップの凹凸は軽快さは皆無で何とも剛直なデザイン。ウブロの薄くフラットで美しいゴムストラップは使用に伴って傷やくすみが目立ってくるのに対して、トロピカルバンドは経年変化が目立ちにくいと考えられる。
凹凸の意匠は文字盤にも採り入れられている。こちらはマトリクス状ではなく地球儀の緯度経度線のような弧を描くことで変化を印象付ける。濡れたような光を放っているのが異様。これはゴムのメタファのつもりなのだろうか。いずれにしても超マットなストラップと強い対照を見せる。
インデックスの5分目盛りはぼってりした長方形の夜光付き、分目盛りは逆に細く過剰に長い線でメリハリを利かす。針は太くタフ。ウブロではインデックスをベゼルにもっていくなどして文字盤の要素を極端に削ぎ落としてモダンな雰囲気を狙っているのと正反対だ。
ケースはラウンド、スクエアのどちらでもない変形8角形で、やさしく穏やかなもの。ヘアラインと光沢の使い分けが丁寧に行われている。このあたりはウブロと同じ。
風防は真っ平ら。見所満載の文字盤を凝視しろということだろうか。
裏面はまるで軍用時計のような素っ気なさ。素材であるステンレスの特質が最も活きる使い方で質実でクール。凄みがある。一方のウブロの裏面は世界観を表現するため、文字ひとつに至るまでデザイナーが存分に腕を奮っている。こちらも別の意味で凄みがある。
バックルの表側はただの四角で飾り気のないものであるが、ここには小さな時計に不釣り合いな程大きく、社章であるカラトラバ十字が刻まれている。遠目に時計を見るとそれこそ3,000円で売っていそうな時計なのに、バックルには仰々しいマークを恭しく戴いているのが何ともユーモラスで可愛らしい。