CHORD SPM 1400E

Mother Father Brother Sister

Mother Father Brother Sister

Piano Sonatas

Piano Sonatas

パワーアンプを調整に出した代替機としてコード社のパワーアンプを借りた。1台20kg位のコンパクトな中堅機でモノラル構成だ。コードのアンプの自宅視聴は初めて。

外観は癖が強いが、側面の繊細なスリット状の処理、上面の丸い開口部のパンチングメタルが、恐らく鳴き防止のために膨らんでいるところなど、細部まで丁寧にデザインされている。DAC64と同じ文字の彫り込み処理などは、ダイナミックな全体のデザインとよく合致していてイギリス独特の美意識が感じられる。
スイッチの操作感はストロークが大きくガタ(遊び)があり大味。しかし信頼性は十分に感じさせる。後面のかなりの面積を占めるヒートシンクが「シャーン」という感じで盛大に鳴る。これが再生音に乗っているが、それ込みでの音造りといえると思う。端子部は狭く、特にスピーカー端子は予想通り大変使いにくい。

様々なソースを聴いてみた。ポップス系とクラシックでは少し印象が異なる。目覚ましいのはポップスの方で、全体にはっきり、すっきりと音が出てくる。屈託のない鳴り方でかなり陽性だ。スタジオでのモニターの音をイメージさせる。特に低域は抜けがよく、ジェフ8SPが随分ドロドロした音に思えてくる。音数が減っているようには聴こえないのでノイズが少ないのではないか。部屋の悪影響が大きく十分には判別できないのがもどかしい。また何故かボーカルは大きくなる。ボーカル帯域に何等かのハイライトがあるのかも知れない。
クラシックは中庸といえるオーソドックスな再生。ノイズ感の少なさは大音量時に感じる反面、小音量時は静かになりきらない感もある。ゲインが3dBほど高い分、残留ノイズが大きいせいかも知れない。低域の伸びは8SPと同様。音色が大きく変わるようなことはない。つやと張りのある音で弦が嬉々として鳴る。反面ピーター・ゼルキンの骨張った気難しいピアノがとても聴きやすくなってしまうあたりは少し疑問を感じる。
スピーカーとの整合は現用機と比べて、良くも悪くもないというところだろうか。ねじ伏せるようでもなく制御できない感じでもない。一方で、積極的にアンプが何かを働きかけ、今まで知らなかった魅力を聴かせるということは無いようだ。

アンプの代替機を頼んだのは最新の駆動力の高いアンプで、低域の問題がどれだけ解決できるものなのかを知りたかったことがある。アンプが駄目ならいっそ買い替えか、コンデンサー交換など大規模なメンテで対応したいと思っていた。
今回の判断としては、低域が緩いのはスピーカー自体の劣化が7割、アンプの劣化が3割というところだろうか。スピーカーの買い替えはしたくないので、当面は劣化込みで使いこなすということになるだろう。