ヒューズ2種

トランポとDACのヒューズをクライオオーディオ製(セラミックヒューズをクライオ処理)に交換してから6〜7年そのままにしていることに気付いた。経年による劣化は一体どの程度だろうか。
交換しようと思いたち、まず仕様を確認するためにトランポのヒューズソケットを抜くと意外にもスペアヒューズが入っていた。自分で入れたはずだが情けないことに全く記憶がない。手をこまねいていても仕方がないので新品のはずのスペアヒューズに交換してみる。一聴、変化を感じない。第一にクライオ処理が効いてエージング不要なのだろう。そして経年変化も感じられない。これなら以前のまま使い続けても問題ないと感じた。ただ折角の機会なので他のヒューズも試してみることにした。
付け替えのしやすいトランポで試すことにする。スローブローの1.0Aミゼットタイプ。まずはIsocleanPower製3,000円。このヒューズは非常に評価が高いようだが、金メッキの癖が気になりそうで今まで敬遠していた。ガラス管を通して見る線材は毛糸のような形状でやや太い。
通電2日目で試聴。
中域がねっとりして低域が団子状になっている。変てこな音。ヒューズには方向が明示されているが、どちらが正しいのかわからないので最初とは逆向き(矢印が外向き)に挿してみる。すると野太く低域までどーんと音が出てくるようになった。何回か挿し替えてみても印象は同じ。明らかにこちらが正しい向きのようだ。予想より変化が大きいことに驚く。
様々なディスクを聴いてみる。全般にリッチになるようだ。人気があるのもわかるような気もする。細かく聴くと、ピアノはベールが掛かってキラキラと眩しい感じ。ヴァイオリンはツルツルのピカピカに変化、可笑しい程に金メッキのイメージそのままの音になっている。
通電4日目。
ピアノの薄いベールは感じるもののキラキラは収まって柄の大きさと高域の過剰な情報量が耳に行く。ヴァイオリンでも張りの良さが際立ってツルツルのピカピカの悪さは目立たなくなってきた。
通電6日目。
以前のクライオセラミックヒューズと比較試聴。逆にベールはクライオの方があるように聴こえる。IsocleanPowerは全体に力強く、やや高域で歪感はあるもののエージングで馴染むような気がする。ヴァイオリンもクライオに比べると派手目ではあるがまあ許せる範囲。張りの良さが音楽の表情を強調してわからせるといった説得力に繋がっているところは評価できる。
大体音質の傾向が把握できたので、次にSATORIアンプで有名な試聴屋製1,570円を試す。試聴屋製のミゼットタイプは普通のガラス管ヒューズと区別できない。違いは目印の小さな丸いシールが貼ってあるのみ。線は細い単線でありがたみは全くない。サブゼロ処理の有無を選択できる。とりあえず「あり」のタイプにしてみた。
通電2日目。
いきなり真っ当な音がする。ヒューズの方向性はIsocleanPowerに比べると少ないようだが、一方は少しだけ余計に音に歪みが纏わり付く気がする。この時点でも十分と感じられたのでIsocleanPowerと挿し替えながら比較する。大柄で大袈裟なIsocleanPowerに対してタイトで精確な印象。これを聴くとやはりIsocleanPowerにはベールというか余計な何かを感じてしまう。金メッキの色艶なのだろうか。
サブゼロ処理を検索すると「0度以下」という意味で焼き入れと焼なましの間に低温処理をして結晶構造を安定化することらしい。金属加工界では一般用語のようだ。オーディオ的に目指すところはクライオに似たものだろうか。
試聴屋に問い合わせると、ミゼット型は1Aと3.15Aの二種しか用意がないとのこと、DACは1.6Aなので使うなら1Aだろうが悩ましい。