マルチオーディオ

後方
部屋の後方左右隅に ARC を押し込め、いい加減なマルチを組んでみた。映像なしのオーディオは2chの時と聴取位置を同一にして、フロントは3.00m、サラウンドは2.07mという距離。サラウンドスピーカーの間隔は約1.8mなので規定の110°よりも大幅にリア寄りの配置ということになる。AVアンプではイコライジングや定在波補正は行わず フロントのみ DG-48 を使う。
手持ちのSACDDVD-AUDIOのマルチチャンネルディスクを掛けてみた。
PENTATONE レーベルのブラームス交響曲第二番では、リアから盛大に音が出て滑らかな音に包み込まれる。今まで2chで聴くと、ふわふわした芯のない録音に聴こえていたが、マルチでは実体感を伴った録音となる。ホールの中で落ち着いて音の中に身を任せるような感覚を呼び起こされる。
鬼太鼓座の怒涛万里では、躍動的な音楽創造の場に自分がいきなり放り込まれたよう。体が自然に熱くなってくる。
FOURPLAY 1st は楽音配置にセンスが絡むことが理解できるような趣味の良い表現。
The Darkside of the Moon は制作者の様々なアーティスティックな挑戦を受け取れることが単純に嬉しい。ただ、これが本当の音楽の喜びかというと少し違うような気もする。
Jeff Beck Blow by Blow はサラウンドに積極的に楽器を配置している。音場の見通しを良くすることで、2chでの過大な音の圧力から逃れていて聴きやすい。より音楽にのめり込める。ただ主役が時に後ろに立つというのはあり得ないと思う。
Carpenters2chでは何となくぼんやりした印象が、マルチになると滑らかで目の詰んだ音場となる。そのせいなのか音が良い悪いとは別にヴォーカルの上手さにあらためて気付かされる。
一方でマルチの良さがもうひとつ伝わらないものも多い。例えばクラシックの DGレーベルの何枚かなど2chとマルチの音調がシームレスに違和感なくつながっていることを目指しているのかも知れないが、マルチならではのメリットというものが強くは感じられず、どうしてもより物量が掛けられたメイン機器での2ch再生が有利な印象がある。また渡辺玲子のバッハ無伴奏などは楽器単音の再生純度が気になってメインシステムでの CD 2ch再生の方が絶対的に有利となるようだ。