トヨタGRヤリスRSをレンタルした。総走行距離2,000kmに届かない新車で、260km程、高速や街中、山道を走った。
GRヤリスというと、ラリーカーのベース車両、4WD、272PS、6MTというイメージだが、そのRZというグレードの他に、FFで120PS、ATのRSというグレードがある。トヨタレンタカーで借りられるのはこちらのRSとなる。内外装や脚回りはほぼ同等で、エンジンが普通のヤリスと同じという。ラリーのホモロゲーションを得るための販売台数確保がグレード設定の理由ということだが、広大なカーボンルーフは特に異彩を放ち、狼の皮を被った羊と言われるのも納得できる。
ノーマルのヤリスも半年ほど前に借りたことがあり、比べるとコーナリング中の挙動の違いが印象的だった。ノーマルが次の瞬間どうなるかわからず、不安と緊張が常にある(通常の速度域なら心配無用なのだろうが)のに対して、接地の状況がよく伝わり、安心できる。着座位置の高さで身体が振られるようなことはなく、どっしりした脚の上で安定している感じは好ましかった。
CVTは10速でパドル付き。ATは、ノーマル、エコ、パワーの3つのモードがあり、言葉通りの明らかな差がある。エンジンはRZの特に広いトルクバンドとは対照的に、4000rpm近辺に狭いピークがあるようだが、癖は感じられない。というより、ATの特性がとにかく支配的だった。アクセルを踏み込んだ時に、回転音はすぐ反応するものの加速はかなり遅れてゆっくりと始まる。出力は変速機でほぼ熱に変わってしまうのか、フラストレーションを強く感じて、思い通りに走らせようという気にはそもそもならない。パドルシフトのシフトダウンはエンジンブレーキの効きがわずかしかなく、エンジン音は確かに大きくなるものの、どこか他人事というか間接的で、自分で操縦している感じがとても希薄で面白くなかった。
非力なエンジンスペックが目に付くが、MTかもっと出来の良いATでないと、エンジンの非力さも正直よくわからないと感じた。
なお、基本パワーモードで、レギュラーガソリン14km/Lの燃費だった。