寺尾聡のディスク

Re-Cool Reflections

Re-Cool Reflections

Reflections

Reflections

寺尾聡のSACDハイブリッドディスク Re-Cool Reflections を聴いたところ、CD層とSACD層の音量差が非常に大きく考えさせられた。2006年と発売は少し古いが発売当初からいつか聴いてみようと思っていた。
CD層の音量は近年では標準的なもの。それに対してSACD層では8〜10dBほど音量が小さい。例えば90年代初め頃の録音と比べても小さい。
ここからは想像だが、エンジニアがCDの器にはダイナミックレンジが収まり切らないのでコンプレッションを目一杯掛けてやる代わりにSACDは音量のリニアリティを最大限活かしてみよう、と考えたのかも知れない。
音質はもともとHiFi調でないのでどちらも良いとは思えないのがどうにも残念だ。音の詰まった嫌な感じはCDに特に顕著だが、SACDでも並以上の見通しの良さはない。
比較のために81年のオリジナル盤も同時購入した。リマスタリングされたという2007年盤ではなく、より古い2000年の盤の方を求めた。個々の楽器の明晰さ木目の細かさ、高域から低域までの音調の整い、ノイズの少なさなど録音機器の性能は新録の方が進歩していることがわかるものの、オリジナルの方が音場の見通しが良く、音色は素朴で自然。
聴いて気付いたのだが全ての曲を知っていた。レコードは持っていなかったはずなので、誰かにカセットに録音させてもらったのだろう。今聴いてみるとフュージョン風味のムード歌謡?といった胡散臭さがある。ただ音楽としての完成度は高く、信じられないほどに極め尽くされている。
新録の演奏はオリジナルのイメージを大切にしていることが伝わり好感が持てる。ただ何回も比較して聴いていると録音表現を含めてどうしても29年前の録音の方が新しく、4年前の新録の方が古臭く感じてしまうのが面白い。もしかすると最初からそういう意図で制作されているのかも知れない。