亀戸餃子

食べ物は焼き餃子が一種類のみの餃子専門店。支店が幾つかあるが餃子のみは本店だけ。
細長いコの字型カウンターの突端、入り口部分に焼き場があり、常に快い音を立てて焼き続けている。席に着くと「飲み物は?」と聞かれ、水もしくは酒類を頼むとすぐさま餃子が一枚出る。食べ終わって少し経つと二枚目が無言で運ばれてくる。いわゆるお通しが餃子二枚。以降は店員に尋ねられるか、自らもう一枚と告げるシステムになっている。
油が染み込んだカウンターのパイプ椅子に腰掛けると、背後は通路なので椅子を引かねばならない。蹴込みがないので足を左右にぐいっと開く。すると自然に背筋が伸びる。その良い姿勢で餃子を黙々と食べるわけだ。
この店の雰囲気でならどんな味でも満足してしまうだろう。ただし、味が悪いかというとそんなことは全然ない。ふんわりしっとりして癖のない具、薄く柔らかくカリッとした焦げ目のある皮。どうということもない餃子であるが、これこそが餃子だろう。肉の旨みやニンニクの香りで魅了するのではなく、最小限に切り詰められた焼き餃子の構成要素のみで勝負している。
油に独特の癖があることが唯一の特徴だと思っていたが、最近それがラー油の味だということがわかった。
地元民は行かない、不味い、という意見がある。しかし自分が何回か行った時はいつでもほぼ満席。一人で来ている近所の常連が店の半分を占めている感じだ。