高麗

冷麺というものは自分には理解出来ない食べ物だった。それが一昨年、ソウルの有名店(オジャンドンフンナムチッ、オジャンドンシンチャンミョノッ)で食べた冷麺で理解することができた。
麺は極細ストレート。つや消しで濃い灰色。美味しそうとはとてもいえない凄い外観。食べてみると軽く噛み切れる。ゴムのようにグニャグニャと纏わり付くことは全く無く、スッキリ、キッパリと切れる。透き通って滋味溢れるスープと相俟って圧倒的な爽快感があった。そして果物も入っていない。目の覚める思いというより、今まで食べていたものは一体何だったんだろうと怒りが沸き上がる程だった。
本場の冷麺を出すと東京では評価の高い浅草橋の高麗(こりょ)の赤坂支店で冷麺を食べた。透き通ったスープは上品だが、少々弱々しい。白っぽい麺はサツマイモだろうか芋の香りが強い。歯ごたえは残念ながら弾力がありかみ切りにくい。ハサミは入らず、長い麺を手繰ることになる。具はどれも上品で少量。薄く小さく切った果物が入るが林檎か梨か判断に迷うほどのサイズだ。
冷麺にはサツマイモの割合の高い平壌冷麺と蕎麦の割合の高い咸興(ハムフン)冷麺があるという。共に北朝鮮の都市の名前が付いている。高麗は平壌冷麺を出す店だが、近くに咸興冷麺を売りにする店もあった。近いうちに試してみたい。