タンポポ

タンポポ<Blu-ray>

タンポポ<Blu-ray>

BD化されたとのことで購入した。ラーメンがメインの映画だが、本筋に関係のない食にまつわる小話がいくつも挿入され、そちらの方が評価されているようにも思う。
画質は期待以上に美しい。人物が映らない東京の空撮などは、30年前の映画とはとても思えない。対照的に人物の服装や化粧は時代を感じさせる。
画質が良くなって、新たに気付いたことが幾つかあった。例えば炒飯のシーンで、台所が意外にきれいなことがわかって興味深かった。
ラーメン好きとして推したい気持ちはあるものの、気になることが幾つかある。食べ物が美味しそうに見えないこと、食べ方が汚ないこと、そして致命的なのが、ラーメンに対するリスペクトが足りないことだろうか。人間ドラマに主眼があって、ラーメンは素材に過ぎない。
美味しそうに見えないのはわざとではないだろうが、食べ方が汚ないのは意図的だ。スパゲッティのエピソードはともかく、蕎麦屋で酷く食い散らかして、千切れた蕎麦がテーブル上に見える程なのは何を表現したいのか理解できない。また、冒頭のラーメンの先生が食べ方を指南する部分にしても、持ち上げた麺を途中で噛み切って丼に落としているのは、先生の所作としては残念な部分だ。
ラーメンについて続けると、色々なラーメンがあって各々が美味しいはずなのに、探求が一元的に描かれ過ぎだろう。丼の形状や、店の内外装がそのラーメンに果たして合っているのかも疑問だ。注文を覚える曲芸のエピソードを入れるより、もっと描くことがあったと思う。個人的には店と客が醸し出す緊張感について語られないのが特に残念だ。混んでいるにも関わらず静まり返った店内で、研ぎ澄まされた主人の所作をカウンターから凝視するといったラーメン店特有の愉しさはぜひ描いて欲しかった。
以上は狂信者の戯言なのかも知れないが、一般人から見ると狂っているとしか思えないようなラーメンに対する情熱が、この映画にはまだまだ全く足りていないように思う。
もう一点、残念なのがオムライスだ。この映画以降オムライスは表面がカリッとしないものが主流となってしまった。卵の香ばしさが楽しめないので本当に迷惑している。