たいめいけん

日本橋洋食店。ラーメン専用の立ち食いカウンターのエリアがあり、入口も別になっている。カウンターに立つと老舗洋食店の広い厨房が見渡せる。一方で、ラーメンが作られるのはカウンターのすぐ前なので、そこだけ切り取ると屋台のような親密な感じもする。通常の店内でもラーメンは注文できるそうだが、このラーメンコーナーは、先代から決して無くしてはならぬと言われているという。ラーメンを食べた。
麺は細く、軽く縮れている。透明感のある黄色が美しい。テポで普通に茹でているが、しっかりした噛み応えがあるこれぞラーメンという王道の麺。
スープが秀逸。獣系の立った香りと上質で重厚な旨味があり、これが洋食店が供するラーメンであることが痛感できる。
しっかりと手の入ったさりげないメンマ。海苔の黒とサヤエンドウの緑、チャーシューの縁の赤が鮮やか。煮豚ではなくチャーシューだろう、肉の旨味が凝縮されて噛むほどにじわりと甘さが広がる。刻みネギひとつ取っても、材料の良さ、包丁の良さが伝わってしまうのには恐れ入る。
早稲田の名店メルシーが、ラーメン専門店ではなく、「軽食とラーメン」の店であることをふと思い出した。たいめいけんも今の時代にラーメンを扱う必要性は全然ないのだが、超ド級のラーメンを気合いを入れて出しているのが何だか可笑しい。